ダイヤモンド鎖とよばれる1次元格子上に電子スピンが配列した磁性体がある.この磁性体は,1次元であることに加え,スピン間に幾何学的なフラストレーションがあるため,量子ゆらぎが非常に大きいという特徴があって,興味深い研究対象である.この量子ゆらぎの効果は,スピンの秩序を妨げ,さまざまなスピン液体を形成する可能性を持つ.どのような,スピン液体相が生ずるかは,この磁性体を構成するスピンの大きさにも依存している.当研究室では,理論的な立場から,スピンの大きさごとにどのような新奇な量子状態何が生ずるかを解明する研究を行っている.2次元では,蜂の巣格子上のスピン系をハイゼンベルグ模型で記述するとスピン励起にギャップのある量子スピン液体が生ずることがわかってきた.含まれる相互作用の値を変更すると,ダイマー的およびヘキサゴナル的と異なった性質を持つスピン液体状態が連続的に遷移する.このモデルで表現できる物質も見つかりスピン液体の存在も確認されている.このスピン液体の性質を理論的に解明する研究を行っている.
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