幹細胞は自己複製と分化能力を持ち,生体組織を維持するために,細胞を供給する役割を担っている.近年,がん組織は単一の細胞集団ではないことが明らかにされ,細胞集団中にごく少数のがん幹細胞(CSC)が発見された.がん治療後にCSCが体内に残っていた場合,CSCは細胞増殖を起こし,がん再発の原因となることから,CSCは新しい治療の標的とされている.CSCの性質を明らかにし,治療法を確立することが望まれている.がん細胞が転移するための特有な変化である,上皮−間葉分化転換(EMT)を誘導した場合に,がん細胞がCSCとしての性質を獲得するとの報告があるが,多くのがん細胞では,CSCとEMTの関連はよくわかっておらず,正確な理解が必要である.EMTを獲得した特徴の異なる乳腺がん細胞を培養して,そのCSC特性を細胞膜貫通タンパク(CD133)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の活性状態から調べている.CSCとEMTの関連について遺伝子レベルからの検討も行っている.
|