シスプラチンを含むプラチナベースの抗がん剤を使ったがん治療は1960年代に始まり,膵臓癌や卵巣癌などで高い抗腫瘍活性を示してきている.しかし,この抗がん剤は,毒性が高く,白血球・血小板の減少・悪心・嘔吐・脱毛・全身倦怠感などの重篤な副作用があり,がん細胞に加え,正常細胞にも効果を発揮するため,使用方法には大きな制限がある.そこで近年,副作用を抑えるために抗がん剤を人体に無害な物質で包み,がん細胞まで届ける薬物伝達システム(DDS)の研究が注目されており,特に,副作用が弱く,腫瘍細胞への標的選択性を有する薬物が見出されれば,薬物の耐性機構を回避する有力な手法と成りうる.
本研究では,アロフェンナノ粒子にシスプラチン(CDDP: cis-diamminedichloro-platinum (II))を吸着させたコンプレックスを作製し,がん細胞へのエンドサイトーシス,細胞内局在,薬物放出の制御などへの応用を探索する.フローサイトメトリーを用いて細胞死の原因を測定することで,complexからのCDDP放出による影響を調査している.アロフェンナノ粒子ならびにアロフェン/CDDP complexのがん細胞に対する細胞毒性と,CDDPによるアポトーシス誘導について研究している.
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