研究概要 |
Si-O-Si結合は非常に柔軟であり、その結合角θが120°から180°の広範囲の値をとりえることから、シリカ(SiO2)は多様な同質異形(polymorph)をもつ。その融液は600K以上の広い温度領域で安定な過冷却状態を保つことができる。この構造多様性を反映して、SiO2結晶では密度や種々のィ性値も種々の値をとりえる。非平衡状態の構造を凍結させたガラス材料では、一般に結晶材料に比べてさらに大きな物性制御の可能性があると言えるが、シリカガラスでその可能性が充分にかつようされているとは言い難い。本研究では、その可能性を追求することを目的としている。これまでの研究成果を以下に記す。
①MCVDスートの構造と物性の研究
平均粒径25nm程度のMCVDスートの構造をFTIR, RamanおよびX線回折を用いて調べ、その構造がバルクとかなり異なることを明らかにした。また、その構造緩和時間もバルクに比べて非常に速いことを明たかにした。
②シリカ薄膜の構造と物性の研究
シリカ薄膜がバルクよりか2%程度密度が高くなる原因について調べた。その結果、液相を経ないで気相からシリカ合成した場合には、圧力印加や酸素欠損の影響がなくても高密度化が起こることを明らかにした。
③シリカガラスに及ぼす添加物の影響の研究
シリカガラスの密度や屈折率は、特異な仮想温度変化を示す。この挙動が添加物によりどのように変わるのかを調べることは、応用上も基礎物性の理解の上でも重要である。GeO2, B2O3, Cl, F, Pなどを添加したシリカガラスを作製し調べた結果、シリカネットワークとの結合状態により、物性値の仮想温度変化の様子が変わることを明らかにした。
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