この20年余りの研究成果から、高次元ブラックホールの多様な構造が明らかになりつつある.4次元の真空な定常時空においては、ブラックホールのトポロジーは球面だけに制限され、そのようなブラックホールを記述する解は、質量と角運動量というパラメーターだけで特徴付けられる「カーブラックホール解」が唯一つの解であることが数学的に証明されている.これはブラックホールの「一意性定理」と呼ばれ、4次元の一般相対性理論の最も大きな成果の1つと言える.これとは対照的に、高次元理論では、許されるブラックホールのトポロジーは球面1つだけではない.実際に、5次元時空の漸近平坦な真空解として、同じ質量と角運動量を持つが、トポロジーの異なる2つの解、球面のブラックホール解とリング形状のブラックリング解、そしてレンズ空間のブラックレンズ解が発見されたのである[Tomizawa and Nozawa(2016)].本研究では、特にブラックレンズに着目し、ブラックホールとは異なる物理的特性を明らかすることを試みる.
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