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研究室情報

物質工学分野

研究室名 数理物理学   
研究室スタッフ 富沢真也(教授) 
研究室概略 一般相対論、重力理論、重力波およびブラックホールの数理的研究
研究室紹介  アインシュタインの提唱した一般相対性理論によれば、重い星が超新星爆発した後の残骸は重力崩壊を起こし、ブラックホールを形成すると考えられている。このようなブラックホールは、アインシュタイン方程式の解として記述され、このブラックホールの厳密解は、唯一つだけであることが証明されている。これは、ブラックホールの一意性定理と知られ、4次元(時間1次元+空間3次元)の相対性理論の最も大きな成果であり、現代の天文学やブラックホール物理の基盤をなすものである。ところが、近年、ブレーンワールドシナリオと呼ばれる新しい高次元宇宙モデルが提唱されたことによって、ブラックホールに関する我々の認識は 大きく変わった。このブレーンワールドシナリオが正しいとすれば、加速器実験において、陽子同士が衝突することによって高次元のブラックホールが形成されるかもしれないことが予言されたのだ。このことがきっかけで、高次元ブラックホールが世界的に研究されるようになったのである。

 一方で、時空次元が4ではなくもっと大きな宇宙モデルは、自然界の相互作用を統一しようという試みで、 古くから研究されてきた。我々の世界が4次元に見えるのは、宇宙は実際には高次元なのだが、何らかのメカニ ズムによって、4次元の宇宙を実現しているからであると解釈する。例えば、古くから考えられていたカルツァ・ クライン理論では、余分な次元はあまりにも小さな円周なので我々には見えない、と解釈される。近年になって、 こうしたカルツァ・クライン理論の考え方は、弦理論やその低エネルギー極限である超重力理論においても用いられるようなった。しかし、こうした高次元理論は、重力を含む素粒子の相互作用を整合的に統一できる最も有力な候補の理論として大変魅力的ではあるが、理論が正しいことを裏付ける実験的な証拠がひとつもない。高次元の存在を検証するためには、高次元特有の性質に注目し、その性質を観測しなければならない。例えば、ブラックホールのトポロジーや一意性に関する研究は、高次元理論の特質が現れるので、 非常に重要になってくると思われる。こうした弦理論の検証をする上でブラックホールが大きな役割を果たすことが期待されている。さらに、近年、素粒子物理学の分野では、AdS/CFT 対応を利用して、クォークグルーオンプラズマの物理学や超流動のような凝縮系の理論的研究にも高次元ブラックホールが本質的な役割を果たすことも明らかになってきた。このような事情により、物理的・ 数理的観点から高次元アインシュタイン方程式の可能なブラックホール解を求め分類することは、現代物理学の極めて重要な課題となっている。しかし、4次元の場合とは異なり、様々な種類のブラックホール解の存在が示唆されているが、その全貌は未だに明らか になっていない。

 アインシュタイン方程式は、連立型の複雑な非線形偏微分方程式系なので、その解を求めることは一般的に困難である。このような非線形方程式を解く試みは、古くは、すでに流体力学等の分野でもなされていた。特に、ソリトン理論の発展に伴い、ソリトン解を求めるためベックルント変換法や逆散乱法と呼ばれる系統的に解を求める手法が開発され、KdV 方程式やサインゴルドン方程式のような非線形波動方程式の厳密解が次々に発見されてきた。さらに、このソリトン的な手法は、70 年代にアインシュタイン方程式にも応用され、様々な物理的な解の発見にも一躍かってきた。特筆すべき は、これらの手法によって、ブラックホール解が生成されるということが明らかにされたことである。しかしながら、4次元アインシュタイン方程式の正則なブラックホール解は唯一つだけなので、 その他の種類の正則なブラックホール解が存在する余地はなく、存在したとしてもすべて特異な解となって しまう。これに対して、高次元アインシュタイン方程式ではブラックホールの一意性が成立しないので、このような手法により未知の興味深いブラックホール解がすべて見つかる可能性がある。 ただし、これまでの研究では、このような手法は、対称性の高い5次元アインシュタイン方程式にのみ適用されていて、対称性の低い5次元アインシュタイン方程式や6次元以上の高次元アインシュタイン方程式に関 しては、その可積分性について現在のところ十分な知見は得られておらず、ソリトン的手法の定式化もされていない。こうした可積分の研究を発展させることは、基礎と応用の両面から大変興味深いものであり、今後の理工学諸分野の研究において中心的なテーマの 1 つをなしていくのではないかと考えている。

 当研究室では、こうした可積分系の研究を一般化し適用範囲を広げ、新たな手法の開発を試みている。また、ブラックホール研究で開発された方法を非線形重力波の解析に応用し、重力ファラデー効果や新奇な非線形現象の研究も行っている。
主な研究テーマ ・ブラックホールの厳密解とその性質
・ブラックホールの物性への応用
・非線形重力波の解析
・可積分系の物理学
研究室HP https://www.toyota-ti.ac.jp/english/research/labolatories/mate/post-39.html
個別研究テーマ
テーマ 研究者
泡構造をもつブラックホールの安定性(Stability for black holes with bubbles) 富沢真也
多体ブラックホール周りの光と粒子の軌道 富沢真也
アインシュタインマックスウェル理論における非線形重力波(電磁波と重力波のモード転換現象) 富沢真也
5次元最小超重力理論における超対称ブラックレンズの特性 富沢真也
スカラー場とブラックホールの無毛定理 富沢真也
微視的状態幾何学の測地的安定性(Geodesic stability of mictrostate geometry) 富沢真也

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